舌小帯短縮症とは?
舌小帯短縮症の程度
上唇小帯短縮症とは?
舌小帯短縮症・上唇小帯短縮症だと
何がいけないの?
新生児期~学童期まで、各発達段階で以下のような症状がみられることがあります。
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① 哺乳障害
吸啜がうまくできず、体重増加不良やお母さんの乳頭痛が生じてしまいます。
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② 摂食・嚥下障害
食塊を左右や後方へ送り込むことができません。
(アイスクリームを舐められないなど) -
③ 構音障害
主にサ行・タ行・ナ行・ラ行が上手に発音できません。
舌小帯短縮症に対する
考え方の変遷
舌小帯切開(切除)は古くから行われている処置です。哺乳障害がある新生児に対して産科医・小児科医・助産師が判断し切開していました。ところが、1970年頃から粉ミルクの普及に伴い舌小帯切開の必要性を疑問視する意見が主に新生児科医から発せられるようになり、1980年頃から小児科学会が舌小帯切開に反対し始めました。1985年に日本小児科学会新生児委員会が発表した『正当な母乳栄養の推進についての要望』の中で、『一部に舌小帯を不必要に切開していることは、むしろ有害と言わなければならない。』と述べたのを皮切りに、2001年に日本小児科学会倫理委員会が行ったアンケート調査に基づいて『舌小帯短縮症と哺乳には関連がない。手術を必要とする舌小帯は稀である。』と結論しました。1)
しかし、2000年代に入り、それまでミルクが主流であった欧米で母乳育児の重要性が唱えられるようになり、『舌小帯切開術は哺乳障害を改善する可能性がある。』という研究論文が多く発表されるようになりました。
2009年に、WHOの『乳幼児の授乳~教科書のモデル・チャプター』にも『舌小帯短縮症が哺乳障害の原因になっている場合には、舌小帯切開を行う医療機関に患児を紹介する必要がある。』と記載され、また2017年には、米国小児科学会が『母乳栄養に優しい小児科外来の指針』を報告し、そこには『舌小帯や上唇小帯の切開は吸啜、授乳、哺乳量を改善する可能性がある。地域の母乳栄養相談員や小児科医が必要であると判断したら、切開の経験を持つ医師に迅速に紹介すべきである。』と記載されました。2)
このような状況下で日本歯科医学会は、2018年5月に舌小帯短縮症に対する治療指針を打ち出しました。
これは歯科に『口腔機能発達不全症』という新しい病名が認可されたことへの対応です。
『口腔機能発達不全症』評価マニュアルでは、『保護者・保育関係者は子どもの舌がハート形ではないかをチェックし、歯科医は舌小帯の異常をチェックすべき』としています。対応策としては、『哺乳障害、摂食障害、発音障害がある場合は、舌小帯切除術を行う』ことを推奨しています。3)
日本では現在、小児科医学会と歯科医学会が相反する治療方針を表明しているため、医療現場で混乱が生じているのが現状です。
2024年2月には、日本小児歯科学会より、『ポジションステートメント 舌小帯切除に関する見解』にて、近年のエビデンスに基づく見解として以下の3点を提示しています。
- (1)明らかな哺乳障害が無い場合は、舌小帯を切除する必要はありません。
- (2)舌小帯短縮症による構音障害は、5歳以降に切除術の必要性を判断します。
- (3)舌小帯切除術は保険適応です。
いまえだ歯科 口腔外科・矯正歯科では、日本小児歯科学会の提言を踏まえつつ、伊藤泰雄先生(杏林大学医学部名誉教授・小児外科医)の考案した舌小帯短縮症の診断・治療・術後ケアを参考にしながら、歯科医師と助産師が舌小帯短縮症による哺乳障害の有無と切除の必要性について、診断を行い切除の必要性を判断した上で処置を行います。
施術後は助産師による授乳支援にて哺乳障害を解消に導き、処置後1か月まで歯科医師と助産師による術後ケアを行います。
<文献>1)~3) 伊藤泰雄:舌小帯短縮症-第2版-,5-11,2023
舌小帯・上唇小帯切除の診療の流れ
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1初診
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2助産師による授乳状況の確認
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3治療計画説明・処置日の決定
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4舌小帯・上唇小帯切除
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5処置後の確認